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アンダルシア⑤(コスタ・デル・ソル点描 その1)

 [タリファの風力発電]

モロッコからフェリーで戻り、タリファで朝方乗ってきたバスに乗り換える。
バスがアラブ時代の城砦が残るタリファの市街を抜けると、景色はすぐに起伏のある丘陵地帯に変わった。

ぼんやり車窓を眺めていると目に入ってくるのは広大な斜面に立ち並ぶ風車また風車、思わず目を奪われてしまう。
元来風の強いことで有名な当地だから風力発電はぴったりなのだろうが、日本での常識からするとかなり大規模に見える。

でも後で調べてみるとここはそれほどのものではないようで、この国の風力発電の本場はガリシア地方など北部の方だという。
それより本当に驚くのはこの国の電力供給に占める風力発電のシェアだ。

スペインではドン・キホーテの小説でみるように昔から風力を動力源として利用してきた歴史がある。そのせいもあってか、近年スペインの風力発電は総発電容量の20%を占めているという。日本では一生懸命やっているといっても、全体のわずか0.5%にも満たないのだからスペインの風力発電は相当先を行っている。

因みに、世界の風力発電容量番付では1位が中国(ちょっと意外だった!)の6300万kWで、以下、米、独と続きスペインは2200万kWで堂々の4位、日本はまだ250万kWに止まっている(11年末)。

原理的に風が吹けば風車が回り電気が起きる風力発電だが、風は人間の期待どおりには吹いてくれない。したがってこの気紛れな電力をムダなく利用するためにはそれなりのシステムが必要になる。即ち、国内の水力・火力・原子力や国外連携(近隣国との電力融通)も含めた他の電源とうまくバランスを取りながら、予測が難しい風力による電力を如何に効率よく取り込むかが鍵になる。

この問題を解決するために用意されたのが06年から運用されている全国レベルの「電力系統制御システム」で、独自開発による新技術も加えて結構うまく機能しているのはもう一つの驚きである。この分野ではEU諸国の中でも先端をいっているらしい。

さらにもっとも重要なのは風力発電コストだが、現在世界の大規模発電の場合、10円/kWh程度らしいが、スペインでは付随する関連費用も含めても充分その域に入っているとのこと。

今後はさらに現在の約3倍、6000万kWまで拡大させる見通しだそうでまさに「風力発電大国」を地で行っている。



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バスの車窓から見る風力発電の風車。1基自体はそんなに大きくないがその数は大変なもの。見渡す限り風車が続いている。




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しばらく走ってもまだ風車が続く。(バス車窓から)



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青空に映える風車と送電鉄塔。。(バス車窓から)


 [不動産バブル]

タリファを出てアルヘシーラスを通過し、右側遠くにジブラルタルの特徴ある岩山を見てしばらくすると次の町はエステポナ(Estepona)だ。

エステポナはコスタ・デル・ソルでも比較的最近になって大きくなったリゾート地だが、高速道沿いには別荘風の建物や丘の斜面に開発された高級住宅群がチラホラと目に付き出す。

日本人の目からすればいずれも超豪華物件に見え、一体どんな人間が住んでいるのかと思うものばかりだが、出来上がって間もないこともあるのだろうがあまり生活の気配は感じられない。計画した頃の思惑と違って好景気はどこへやら、殆どの物件は無人のままで放置されているように見える。

このあたりを始めて通ったのは5年前。当時すでに建設ラッシュの真っ只中だったが調子に乗りすぎではないかと心配になったものだ。

バスがマルベージャ(Marbella)周辺に近づくとそんな風景は一段と多くなる。
これが現在ヨーロッパ、いや世界中を騒がせているスペインの不動産バブル崩壊の一例なのだろうか。

スペインにユーロが導入されたのは02年。当時は低金利時代だったことから国内・国外から投資資金がどっと流れ込んできて国中で空前の不動産開発ブームが起こった。
以降数年に亘って好景気を謳歌、年4%前後の実質成長率が続き、「EUの優等生」と言われるほどだったのである。

しかし、その成長が不動産バブル前提だったことから、08年のリーマンショックを契機に徹底的に咎めを受けることとなり、現在の金融財政危機につながってしまった。

マラガからフエンヒローラに来る電車の沿線に見る景色も全く同じで、クレーンを残したまま建設中断を余儀なくされている現場も多い。現在の不動産価格はまだ下降が続いていて底は見えないというから当分は誰も手を出さないだろう。

コスタ・デル・ソルに燦々と降り注ぐ太陽の輝き、海辺の長閑な景色は何も変わっていないのだが、この地域が元気を取り戻すには一体どのくらい先になるのだろうか。


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マラガから西100km弱の間に、トーレモリーノス、フエンヒローラ、マルベージャ、エステポナとリゾートの町が続く。



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エステポナの街。



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「エステポナ」ー「マルベージャ」間の高速道沿いで見かける新興の住宅地。(バスの車窓から)



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立地条件の厳しい丘の全面が開発されている。景色は良いかもしれないが生活するにはちょっと大変に見える。(車窓から)


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別のケースだがもっと厳しそうな立地。果たして売れているのか?いまどき簡単に買い手がつきそうには見ない。(車窓から)


  [トーレモリーノス散策]

アフリカの日帰りツアーから戻った後のある日、トーレモリーノス(Torremolinos)へ行ってみた。この町はフエンヒローラとマラガのちょうど中間にあり、電車で20分ほどで行ける。以前に2度ほどこの町のホテルでも過ごしたことがあるので街の佇まいは大体知っている。
フエンヒローラ同様リゾート地だが、コスタ・デル・ソルでは最も
早く開けた先輩格の町で人口は同じく6万人程度。

今回もやっぱり地下駅から出ていつも賑やかなサン・ミゲル(San Miguel)通りを海岸に向かって九十九折の坂道を下る。
街の大部分は海岸段丘の上にあり、フラットなフエンヒローラの街と違って地形的に変化があるので別の趣がある。

3年前の景色がそんなに変わるはずもないが、数kmは続く海岸沿いの遊歩道は何度歩いても気持がいい。
その遊歩道に沿って100m間隔ぐらいだろうか、簡易な箱型平屋のレストランが並んでいる。

昔はこの海岸通りにイワシ、イカ、貝、たこ、えび・・・など魚介類の焼きたてや揚げたてとカーニャ(生ビール)を飲ませる屋台のような店(チリンギート:Chiringuito と呼ばれる)が沢山出ていたそうだが、それが今は下の写真のような浜辺の簡易レストランになっている。

マラガの海岸に行けばまだチリンギートがあるようだし、この辺でも夏の最盛期には昔風の店が出るのかも知れないがその時期に来たことはないのでよく分からない。
ひととおりブラブラした後そんなレストランの一軒で軽い昼食にした。

ハイシーズンなら混み合うのだろうがまだ4月、レストランはヒマそうにしていた。選り取りみどりのテーブルから選んだのは海側のテラス席。快晴微風でそんなに暑くない今日の天気は生ビ-ル日和だ。
イカリング、えびのフリッターを肴にジョッキを傾けパンをかじっていたら概ね満腹になった。


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地下の駅から地上にでればこんな広場になっている。開削工事で駅を造りその後で蓋をしたように見える。



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九十九折のサンミゲル通り。両側はおみやげ屋、レストランなどが続く。



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トーレモリーノスの浜辺。



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渚の先はマラガの街になる。



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中心部の海岸から少し西に行くと崖が海に突き出た緩い岬になっている。その突端部をそぞろ歩く人々。


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岬の突端を回る(西方向)とカリウエラ海岸(Carihuela)地区になり、新たな砂浜が始まる。



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海岸遊歩道にある簡易レストラン。建物は砂浜に建っていて右側は海になる。



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レストランの正面入口。写真付きのメニューがあり、殆どは魚介類の料理だ。



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レストラン奥側(海側)のテラス席。浜辺はすぐそば。



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注文したのはイカリングとえびのフリッター、生ビールが旨い。



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レストラン調理場の裏手で串刺しにしたイワシが焼かれていた。


 (アンダルシア⑥に続く。)


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