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① リゾートの風景

[またやってきたコスタデルソル] 

今年も5月初旬まで南スペインのコスタデルソル(Costa del Sol)で約1ヶ月過ごしてきた。行く前にコスタデルソルのどの町に宿を取るかいろいろ調べたものの、結局、昨年と同じフエンヒローラ(Fuengirola)にまず行って、後半はトレモリーノス(Torremolinos)に移ることで落ち着いた。
両町ともコスタデルソルでは名の知れたビーチリゾート、人口5万人ほどだがひととおり何でも揃っていて交通の便や治安も良く、勝手も分かっているのでこれ以上の町はなかなか出てこない。とにかくストレス少なく滞在できそうな場所を優先した。


予約を入れていたフエンヒローラのアパートメントホテルは海に面していた。すんなりチェックインが済みカードキーを貰って薄暗い廊下をあてがわれた部屋に向かう。カードキーが一発で開かなくてイライラすることが多いのだが今回は問題なし。ドアを開けると、バルコニーの向うに相変わらず陽光まぶしい地中海のパノラマが飛び込んできた。期待どおりのこの風景そしてこの空気ははるばる20時間もかけてやってきた甲斐があるというものだ。桜が散りかけのまだ薄ら寒い日本から来た身にはここの暖かく湿気のない空気は本当に価値がある。                                                            

                                                               

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ホテルの部屋からはガラス戸越しに碧い地中海が拡がる。


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バルコニーに出ると浜辺と海。砂浜にはいかにもリゾート気分にさせてくれる日傘(Sombrillas)とデッキチェア(Tumbonas)のセットが並んでいる。勝手に使っていいのだが、いずれおじさんがやって来て料金を徴収される。1日4ユーロぐらいが相場。


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バルコニーの下は海岸道路(Paseo Maritimo Rey de España)になっていて車道を挟んで両側は遊歩道。

[海辺沿いの遊歩道] 

バルコニーから見下ろすと海沿いには広い砂浜のビーチと市街を区切るように延々と立派な海岸道路というか遊歩道が通じている。スペインのビーチリゾートの町ではどこでもこの道路の整備に力を入れていてそこからの景観美を競っているところがある。フエンヒローラでも町の東端から西端まで海岸線に沿って約7kmの遊歩道(Paseo Maritimo Rey de España)が続いている。大体、2車線の車道を挟んで海側は幅広の遊歩道が、街側はホテルや歩道までテーブルを並べたオープンカフェ、レストラン、みやげ店などが並び、訪れた客が散策や食事、ショッピングを楽しめるようになっている。

                                                                   

まだバカンスには早いこの時期、歩いているのは圧倒的に年配のカップルやグループが多い。平日は現役を引退して気候の良いこのあたりに住みついている老夫婦や休みが取れるかなど気にせずにいつでも旅行できるリタイア組(我々もその部類だが)が主流だ。そんな中、夫婦のどちらかが歩行が難しくなっているのか車椅子を押す姿も結構多い。中には自走式車椅子で動き回る年寄りもいる。

週末になると若者や家族づれも多くやってくる。孫を連れた祖父母と息子(娘)夫婦の三世代一緒でビーチに遊びに来ているのを見かけるのは微笑ましい光景だ。恐らく近場の人達なのだろう。とにかく、ヨーロッパは陸続きだし道路事情も良いのでスペイン以外からでも車で簡単に来れる。勿論日本と同じようにバスを仕立てて団体でやってくるオジさんオバさんのグループなども多い。

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遊歩道を散策する人達とベンチの年配カップル。フエンヒローラで。



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こちらはトレモリーノスの遊歩道。このあたりは地形のせいで車道が取れず歩くのには快適だ。


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道端のオープンカフェに座って行き交う人を人間観察するのもおもしろい。フエンヒローラで泊まっていたホテルのオープンカフェで。


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フエンヒローラに戻るバスを待つ人達。平日の午後だが殆どがお年寄り。フエンヒローラからバスで20分のミハス(Mijas)の村で。


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冷たい海を嫌がる(?)孫と戯れるおじいちゃん。フエンヒローラで。



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日曜日、トレモリーノスの浜で遊ぶ子供たち。この辺の海岸は砂浜が優勢だが、崖が迫っているところは磯になっているところもある。


[皆どこから来ているのだろう?]

ここではビーチライフを楽しむのが基本だから街中やホテルで見掛ける限り皆ラフなTシャツ短パン姿が制服みたいなもの、とにかくその姿で海辺の散策やカフェは勿論、街中のレストランでもショッピングでもまったく問題ないので気楽なことこの上もない。

その外見のせいか行き交う人達はまさしくヨーロッパのごく普通の庶民に見えるが、一見してヨーロッパ人でもどこの国から来ているのかはなかなか分からない。今はEU圏として統合されているので国境はないようなものだが、ことばが違うので何語で話しているか聞かないとハッキリしない。
聞こえてくる限りではやはりスペイン人が一番多いようだが、イギリス人の多さもそれに匹敵する。1960年代にこの辺のリゾート開発の発端をつくったのは彼等、それも温暖な気候とのんびりした風土、安い物価に魅せられて移住してくる年金生活者だったと言われている。だから英語とスペイン語併記のレストランやお店が特に海岸道路には多い。

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海沿いの遊歩道のベンチはいつものんびりと休む人達で一杯。


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Tシャツも脱いで手をつないで歩く老夫婦。こんなカップルがあちらにもこちらにも。一見欧州人であることは確かだが、英人?独人?仏人、西人?かは分からない。


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ミハスのバス停で。この一団はフランスのグループらしかった。


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ミハスのおみやげ店が並ぶ小道も海岸沿いのリゾートの町からバスでやってきた観光客で賑わっている。



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英語の朝食メニューを置いているイギリス人相手のカフェ。因みにここは安くて味もまあまあだった。


イギリス人に続いてはドイツ、フランス、北欧などが多く、ある時アイルランドからのツアーバスを見かけたこともある。

ホテルの部屋のテレビを入れてみると大よそどこからの客を受け入れているかが分かる。設定してある
衛星放送のチャンネルが客種を考えてホテルの方でセットしているはずだからだ。
例えば後半泊まったトレモリーノスのホテルでは20ぐらいあるチャンネルをスペイン語放送7、英語チャンネル5、独語、仏語もそれぞれ4~5という風に割り振っていて思いの外独仏チャンネルが多かった。確かにこのホテルのロビーではドイツからの団体さんのドイツ語がいつも飛び交っていた。残念ながら日本語チャンネルはなかったのは言うまでもないが、このあたりに1ヶ月居ても殆ど日本人を見かけないのだからやむを得ないところだろう。


[リゾートでの楽しみ方]

こういうリゾートに来てどんな過ごし方をしているのかは人それぞれ。思い思いの格好で海岸沿いの散策を楽しむ人、積極的にジョギングやウォーキングをする人、道沿いのベンチに座ってボーっと海を眺める人、おしゃべりに夢中なグループ、それらを道沿いに並ぶオープンカフェの席からのんびり眺める人、ホテルのプールサイドや砂浜では朝から晩までデッキチェアにひっくり返って身体を焼いている人(たまに上半身スッポンポンの女性もみかける)、日傘の下で読書に余念のない人、海水はまだまだ冷たいのにそれでも泳ぐ人などなど・・・

飯時になると海岸沿いはもちろん街中にあるスナック、バル、レストランでゆったりと長い時間をかけて食事を楽しむのはごく普通のことだが、部屋のバルコニーで自前の料理を用意して薄暮の夕景を肴に呑むのもいい。ある時隣が賑やかなのでバルコニーに出てみると複数の家族(?)が集まって呑んでしゃべってパーティー状態だったことがあるが、気の合う仲間と来ていればこれは最高の楽しみ方の一つだろう。


勿論、公共のバスや電車で近くの町や村に出かけて違った雰囲気のスペインの田舎を感じてくるのもありだし、旅行社で申し込めばバスツアーでグラナダ、コルドバや対岸のアフリカ北端のタンジェなどへも日帰りで行ける。

それでも感じることは、リゾートに来たからといって散財している風はなく、意外に堅実で実質的に楽しんでいる印象が強い。



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遊歩道をウォーキングする人達、その先の砂浜には如何にも南国を想わせる日除け傘とデッキチェアが並んでいる。



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フエンヒローラのビーチ。日光浴をする人、波打ち際を歩く人、投げ釣りをする人もいる。


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犬を散歩させる若い女性。フエンヒローラで。



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太陽を求めてプールサイドは朝から晩まで盛況だ。トレモリーノスのホテルで。



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フエンヒローラの街の西半分を40分でゆっくり周る観光自動車。何の案内もなく他愛ないが一回りして4ユーロ/人。



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高台にあるトレモリーノスの繁華街から海岸に続く有名なSan Migul通り。特に海岸近くは急崖のため九十九折になっている。道の両側はおみやげ店、カフェ・レストラン、各種のお店が延々と続き一日中観光客が途絶えることはない。


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山の斜面に拡がるミハスの白い村。フエンヒローラからバスでちょっと出るとこんな村がある。

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いかにもアンダルシアらしい雰囲気のあるミハスの裏通り。


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ミハス村の高台に小さい闘牛場があった。闘牛はやっていないが入場料を払えば中に入れる。

 

[リゾートに来る階層は?] 

それでは、この町に来ているのはどんな連中なのだろう。ひっくるめて決して特別の人種でもないし特別の階層でもないことは確かなようだ。
リゾート地に来て滞在型の休暇を楽しむというスタイル(現役世代が何週間も夏休みで家族づれで来れば所謂バカンスということになる。)はそれなりの歴史を経て定着したヨーロッパの文化だから一般庶民も多少予算が窮屈でも年に一度のバカンスだけは外せないという意識が強いとよく聞く。

恐らく金持ちは金持ちの、庶民は庶民の方法でマイペースのバカンスを楽しんでいるのだろう。確かにマルベージャ(
Marbella)の隣にはアラブの王様の別荘が沢山あって豪華なヨットが停泊し高級ブティックが並ぶプエルトバヌース(Puerto Banús)みたいな超金持ち専用の場所もあるが、コスタデルソルには沢山のリゾートの町があって大多数の大衆も目的・予算に応じていろいろな選択ができるようになっている。

休暇旅行で最も重要なのは宿泊先の確保だろうが、高級な5つ星から経済的な1つ星までランク分けされたホテルやホステル、長期滞在用のアパートメントホテルやペンション、1週間単位で契約する家族向けマンション(コンドミニアム)、親戚や友達の別荘などもあるだろうし選択幅は日本の場合よりは広そうだ。知り合い家族同士でシェアしたり時期を少しずらしたりしてコスト削減の工夫もしているはずだ。
食についても高くつく外食を避けようと思えば、市内至る所にあるスーパーで食材を調達し自炊するのはごく当たり前のことらしく、我々自身もミニキッチン付きの部屋にいたのでスーパーへはよく買出しに行ったが、店内は地元の客に混じって休暇滞在中らしき家族づれの姿をよく見かけた。


[リゾートの風景は変わるか?]
4月から5月にかけたコスタデルソルの風景をスケッチするとこんな具合だ。多分、7月、8月の最盛期になるとまた別の風景になるのだろうが、最近のリゾートを取り巻く環境は少しづつ変わりつつあるようだ。今回気がついたことにアフリカ系黒人移民の物売りをする若者が結構増えていること、海岸沿いに立ち並ぶホテルやレストランの中でも空き家になっているところが出てきているなど微妙に状況は変化してきている。

今後、世界規模で景気が低迷し、燃料・食料価格などの上昇や格差社会の拡大などがさらに続けば、これまでのリゾートの風景は相当変わってしまうのかも知れない。少なくともここ何年も続いてきたリゾート開発への投資ブームは急ブレーキがかかったようだし、我々日本人にとっても今のユーロ高と航空運賃の上昇はただでも遠いコスタデルソルをますます遠のかせてしまうのは確かで残念なことだ。

それでもコスタデルソルの太陽は今日も金持ちにも貧乏人にも公平に降り注いでくれているはずだが・・・。

 

 
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