17.マドリード② (近郊の町、アランフェスへ) [15/9北スペイン]
[アランフェスへ]
今日は2回目の日曜日、明日帰国するので実質スペイン最後の日になった。
以前来た時にマドリード市内はざっと周っているので、今回は近郊の「アランフェス」(Aranfuez)に行ってみることにした。
アランフェスといえば、ホアキン・ロドリゴ(Joaquín Rodrigo Vidre) が1939年に作曲したギター協奏曲「アランフェス協奏曲」を想い出す。特に第2楽章はその哀愁を帯びた美しい旋律をご存知の方も多いだろう。
3つの楽章からなるこの協奏曲はギターのためだけでなく管弦楽としても演奏されることも多く、過去にはジャズに編曲されて人気を博してもいる。
それはさておき、アランフェスはマドリードの南50kmぐらいか、むしろ荒涼とした景色が普通のスペイン中部地方だが、この辺りは心休まる穏やかな水郷地帯が広がっているためか、スペイン王室の保養地になったのだろう。緑濃いタホ川沿いに並ぶ王宮(Palacio Real)と庭園は世界遺産に登録されており観光地としても有名だ。
マドリードからはバスでも電車でも行けるが、今回は宿から近いアトーチャ(Atocha)駅を利用してrenfe(スペイン国鉄)の電車を選択。この駅は昔からマドリードの中央駅的存在だ。現在は、AVE(スペインの新幹線)が開通して以降高速鉄道や長距離路線の起点になっている駅舎と近郊路線ターミナルの駅舎に分離されている。
昔のアトーチャ駅で始発のプラットホームを覆っていた大鉄傘のかまぼこ型ドームは、AVEの開通後外観だけを残して植物園風に緑が配置され、巨大な待合室を中心としたスペースに変身している。
アランフェスへは近郊線C-3の地下ホームから乗れば44分で着く。今日は日曜日で本数も少なく駅も電車も閑散としていたが、平日のダイヤを見ると利用客が集中する7時台などはアランフェス発アトーチャ方面行きが9本もあり結構な通勤路線のようだ。
タクシーで降りたところは、AVEのマドリード・プエルタ・デ・アトーチャ駅(Estación Madrd
Puerta de Atocha)の方。
中を覗くと、昔プラットホームがあったヨーロッパの駅特有の建物は、植物園のような一角もある待合室に変わっていた。
アランフェス行きの列車はこちら、近距離線が出ているマドリード・アトーチャ・セルカニアス駅(Estación de Madrid Atocha Cercanías)の方だ。
キップはこの機械で買う。ゆっくり画面の指示に従って進めば難しくはない、後ろからせっつかれなければだが…。
出発案内の横に近郊線の路線図もあって親切。
駅ナカではないが、改札口近くで朝食を供する店を探す。
カフェテリアのパンケース。
アランフェス行きの列車からの景色。マドリードの郊外に出た辺り。
アランフェスに近づく頃は田舎の田園風景(田んぼはないが…)真っ只中。
[アランフェスの王宮と庭園]
アトーチャ駅を出た電車は次第に都市部の景色から田舎の田園風景へ移り変わっていく。40分そこそこでアランフェスに到着だ。
自動改札を通って駅を出て振り返ると、そこには”古都”アランフェスを象徴したような駅舎がドーンとあってびっくり。人口が5万に満たない小さな町には立派すぎる駅舎に思えるが・・・、やはりスペイン王室の威光がなせるわざか?
駅からトレド通りの緑の並木道をのんびり15分ほど歩くとアランフェス王宮が見えてくる。王宮はタホ川(Río Tajo)が蛇行する穏やかな流域の緑に囲まれている。
タホ川は延長1,000kmを超える大きな川だ。ここはまだ上流部だが、イベリア半島中央部を西に向かって流れトレドを通りスペインを横断後、ポルトガルに入るとテージョ川に名を変えてリスボンから大西洋に注いでいる。
、、
この王宮は王室の春、秋の離宮として18世紀後半に完成したのだが、当時すでにスペインの没落は決定的になっていたのは皮肉だ。
全体は沢山の部屋からなる居住部の宮殿と隣接する広大な庭園からなっていて、その佇まいは印象派の絵画を思わせる美しさではある。
宮殿内部は見学ができ、当時の王室の生活ぶりを垣間見れる調度・家具、衣装や移動に使われたワゴン型の馬車なども展示されていた。
また、森に囲まれた庭園は西洋式の左右対称型を基本に、植え込み、花壇、多くの泉や像で飾られていて水辺で舟遊びも出来たようだ。
東京駅と見まがう(?)ような立派なアランフェスの駅舎。
アランフェスの駅から王宮につながる石畳の道。
途中にはこんな並木道も。その昔は王族の馬車が通ったのだろうか?
ようやくアランフェス宮殿が見えてきた。
アランフェス王宮の全体案内板。
宮殿の前庭は広大な広場。
宮殿中央部。
よく見ると観光客も結構来ている。
宮殿の前に広がるパルテレ庭園(Jardín del Parterre:芝生と花壇の庭園)。
遠景の芝生と周りを花壇が取り囲んでいる。
池にはカモ(?)が沢山。
大きな噴水池、中央に彫刻群が配されている。この頃になって空が少し明るくなってきた。
噴水の水しぶきの向こうに宮殿が顔を出していた。
出口近くの彫刻の記念碑(?)。正面は王宮の宮殿。
この立派な門から外へ。チップ目当ての男が奏でるアコーディオンの音が長閑な雰囲気を作り出していた。
[川べりのレストラン]
宮殿を出て庭園を散策、道なりで出口を出たのだが、後で地図で確かめると駅から遠くなる方向に出ていたようだ。それよりすっかり天気も良くなって気持ちの良い青空が広がってきた。
立派な門扉のある出口を出ると緑の美しい道路が続いていて、すぐ左手に「El Rana Verde」(”あおガエル”という意味か)というレストランがあった。雰囲気が良さそうなので入ることにした。
ちょうど13時近くになり昼食時の時間帯だが店は空いていた。メニューには1903年から開いているとあったからもう100年以上続いている伝統の店らしい。
この店はタホ川に面していて、川べりに近い席に着けば水面を眺めながらの食事を楽しめるはずだが、案内されたテーブルは生憎内側、良い席はリザーブされていたようだ。
しかし、こういう店でも定食メニュー(Menú del Día)があるのは嬉しい。
前菜、メインの2皿にデザート、飲み物付き、税込みで16ユーロだ。
地元産の野菜料理などの前菜と各種肉料理からそれぞれ一皿を選択し、デザートは、フルーツポンチ、チーズケーキ、お米のプディング、プリンなどから一品を選ぶ。さらにワインも付いていて言うことはない。
食事は勿論、長閑な雰囲気も楽しんでレストランを出たのは概ね14時だった。
少し歩いてからタクシーを拾い駅に戻った。
帰りの電車もガラガラ、この近郊線C-3はアトーチャ駅から地下鉄1号線に乗り入れている。
まだ時刻は15時半頃なのでアトーチャ駅で下りずにソル(Sol)駅まで行って下車、日曜日の夕方の旧市街をぶらつくことにした。
パルテレ庭園を出てすぐ左側に「El Rana Verde」(”あおガエル”の意味)のレストランがある。
「El Rana Verde」の店内。テラス席や川に近いテーブルは団体客でも来るのか、グラス類のセットが用意万端だ。
「El Rana Verde」のテーブルから見るタホ川の対岸は緑が美しい。
「El Rana Verde」のメニュー。前菜には地元菜園の野菜を使ったサラダ、ガスパチョ、キノコと小エビのパイなど、メインディッシュはマドリード風肉団子、ワイン味のキノコ添え豚のほほ肉、鶏のローストなどが並んでいる。デザートは本文に書いたとおり。
ランチを終えて改めて「El Rana Verde」の店をパチリ。
アランフェス駅に戻った。構内のホールは芸術性(?)を感じさせる造作だが、日曜日で閑散としているとは言え、こんな豪華な造りが勿体ない気もする、まあ余計なお世話か。
renfeのマドリード近郊線C-3の時刻表。アランフェス始発は5時20分、平日は6時台が6本、7時台は9本まで増える。
アランフェス駅の近郊線ホーム。
折り返しになるのか、マドリード方面から来た列車が到着。
やはり折り返すようだ。
マドリード市街到着10分前頃の車窓。
いよいよ市街に入ってきたようだ。
帰りはアトチャ駅を通り越してソル駅で下りた。ソル駅の地上とつながっているエスカレーターでプエルタ・デル・ソル(Puerta del Sol)の広場に出られる。
コメント 0