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14.ビルバオ➄ (グッゲンハイム美術館) [15/9北スペイン]

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グッゲンハイム美術館はネルビオン川が大きくカーブした突端に建っている。昔、造船所があったあたりという。ある批評家はその姿を”幻想的な夢の船”と評した。(資料映像から)



 [グッゲンハイム美術館の生まれは]

昨日はラグアルディアからのバスが現地発19:50しかなく、ビルバオの宿に戻ったのは22時過ぎだった。田舎に出た時は帰りの便に要注意だ。

一夜明けて今日はビルバオ最終日、明日はマドリードに出ることにしている。だから今日はどうしてもグッゲンハイム美術館に行っておかなければならない。

今やビルバオのシンボル的存在で、「グッゲンハイム美術館を見ずしてビルバオを語るなかれ」という状況になっているからだ。

町が小さいので多分歩いても行ける距離だが近くまでタクシーで向かった。
この美術館を理解するためにはビルバオの都市再開発の話から入る必要がある。

ビルバオのあるバスク州は1960から70年代、重工業がめざましく発展したのだが、80年代に近づくと工業都市としての産業基盤が急速に衰退していった。

当時の港湾施設はネルビオン川の河口から15km上流のビルバオ中心部まで延びていて、そこを船舶が遡航するため右岸、左岸を結ぶ橋の建設もできず、両岸が長い間分断された状況が続くという地域の事情もあった。

こんな中で、衰退した地域経済を活性化させるためにビルバオ市は都市再生プロジェクトを構想した。
その中核となったのはビルバオ市の外港設備の拡張計画だ。当時都市中心部にあった港湾設備を撤去・移転しその跡地を再生するというプランで、グッゲンハイム美術館の建設はその目玉だった。

都市の中心部を占めるこの地区は約35万㎡の広さ、今ではとても想像できないのだが、近年まで港湾施設やコンテナ用の鉄道駅、造船所が立地していたという。現在は以下に載せた写真で見るように、緑の都市公園の中にグッゲンハイム美術館、ホテル、ショッピングモール、高層事務所ビルなどが佇んでいて、昔の面影はまったくない。

このように、グッゲンハイム美術館はビルバオ市を中心とした都市再生プロジェクトの一要素に過ぎなかったが、美術館建設と並行して数々の官民共同プロジェクトも推進され、1997年に開館した同美術館事業は見事に成功を収めている。

このビルバオ市の創造都市プロジェクトは、世界に数多ある類似事例の中で最も成功したケースとして今ではとても有名だ。



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グッゲンハイム美術館に近い街中、落ち着いた控えめな雰囲気がとてもいい。





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目的地近くまできた、洗練された街並み。





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同上。




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ロータリーの花壇もよく整備されている。




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Alameda Mazarredo通りという幹線道路。



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左側にイベルドローラ タワー(Torre Iberdrora)が見えてきた、そろそろ目的地は近い。





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Alameda Mazarredo通りの向こう側に花の植え込みで造られた子犬のパピー(後述)が見えてきた、さらにその左奥にグッゲンハイム美術館の建物が見えている。




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さらにパピーに近づく。





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左手には高層タワーが輝いていた。i のマーク塔が立っているので近くに観光案内所があるようだ。




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パピーの前に到着。




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美術館手前のAlameda Mazarredo通りの街並み。



 [グッゲンハイム美術館へ]

目的地の少し手前で車を降り、Alameda Mazarredo通りを横切って美術館に向かう。左手には青空に映える電力会社の高層ビルが見える。前方に見えるグッゲンハイム美術館(Museo Guggenheim Bilbao)は、まるで積木を無造作にころがしたような外観で、建物自体が100%現代アートの作品になっている。

入口の手前では花の衣装を纏った番犬(!?) ”パピー”が出迎えてくれる。
米国のアーティストが92年にドイツで制作した作品だそうだが、その後グッゲンハイム財団が購入し当美術館の前面に設置したとのこと。

高さ12mの犬型をした鉄の骨組みにパンジー、ベゴニア(らしい?)などの花々を植え込んだ巨大な盆栽のような立体造形物だが、水や施肥、日照などのことを考えると手入れは大変だろう。

この美術館はニューヨークにあるグッゲンハイム美術館の分館のひとつで、米の建築家、F・ゲーリーが設計している。

ゲーリーは「曲面の無規則性が光を集めるように設計した」と述べていて外観には全く平面が見られない。当初、ニューヨークの評論家は魚の鱗を連想させてきらきらと反射する外観について、「チタニウムの外套をまとい、うねるような形状の幻想的な夢の船」と表現している。

緩い下り坂を下って半地下になった入場口で入場券を購入、手荷物を預けてゲートをくぐると内部は3階まで吹き抜けのアトリウムのようなホールになっている。
そこからはガラス越しにネルビオン川と対岸の緑の山地を背景にした街並みが見渡せる。

鉄枠のガラス越しに日の光がふんだんに射し込み、外に見える緑と街の景色は鮮やかだ。バロセロナで訪れたガウディのカサ・パトリョの窓越しの景色を思い出す。

美術や造形の分野に興味がないわけではないが、この美術館で現代美術、コンテンポラリーアートを見せられると改めて自分にはその方面の素養は全くないことが分かる。館内では常設、特設の展示が行われていたようだがひととおり雰囲気だけは味わって退館、周辺プロムナードにある有名な蜘蛛のオブジェなどを眺め美術館を後にした。



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何とも表現し難い外観、それが前衛的ということか。





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パピーの手前を歩く女性と比較すると、この子犬(!?)が如何に大きいかが分かる。高さは12m強。




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緩い下りの通路を進むと半地下の美術館入り口に行き着く。






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これが、「チタニウムの外套をまとい…」と言われた部分だろうか、全て曲面で構成されている。






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美術館内部1Fの入場ゲートあたり。吹き抜けになっている。



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成程、”アトリウム”とはこのことか!ガラス越しに川を挟んだ対岸の街並みが見える。





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見上げると2階、3階の通路にも人が見える。





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1階の奥にあるこの造形作品の意図するものは? 何も感じ取れないのはフツウ?オカシイ?




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それを眺める(鑑賞する)人達。




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3階から見下ろすネルビオン川と川向うの景色。バックに緑の丘陵が続き川沿いの街並みとのコントラストが美しい。





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同上。3階へはエレベーターで上られる。






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入場する時1人ひとりに渡されるイアホーンで説明を聴けるAudio Guideだが、日本語による説明はなく使い勝手はイマイチ。





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1階では分からなかった造形作品の全貌が3階からは見ることができる。とは言っても依然として何を表現しているのか分からず。




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こんな展示もあったが…






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3階から1階のホールを見下ろす。





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3階から2階につながる通路からの景色。造形美が計算されている。





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こんな光の演出も。




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出口を出て振り返ると美術館の外観はこんな感じ、構造が複雑すぎる(?)。




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美術館とネルビオン川の間の遊歩道にもこんな作品が、




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フランスの彫刻家、ルイーズ・ブルジョアの蜘蛛シリーズ作品として有名らしい。画面右上はネルビオン川を跨ぐサルベ橋。



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サルベ橋は両側歩道付き5車線の鉄製吊り橋。名物の赤い橋脚の向こうにグッゲンハイム美術館がある。(資料映像から)





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「蜘蛛」のオブジェは人気がある。




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帽子を路上に並べて売っていた。店番がどこかに行ってしまってるみたいだが帽子のセンスは悪くない。




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グッゲンハイム美術館の北西(上流側)の河畔にイソザキ・アテア(磯崎ゲート)がある。磯崎新と地元の設計家によって計画・設計・建設された高層住宅を含む複合ビル開発。これもビルバオ市の創造都市プロジェクトの一部。(資料映像から)



 


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