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9.サン・セバスチャン [15/9北スペイン]


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サン・セバスチャンのシンボル、コンチャ海岸(Playa de la Concha:conchaは貝殻の意)。
ヨーロッパでもっとも人気のある海岸の一つという。その名前はこの湾が上空から見るとホタテ貝のような弧を描いていることに由来している。残念ながら午前のモンテ・イゲルド(Monte・Igeldo)山からの眺望は逆光になってしまう!


  [サン・セバスチャンのアパートメントホテル]

パンプローナからは北に1時間ちょっとのバスでサン・セバスチャンに着く。走りだしてすぐはまだ緑の少ない中(スペインらしい?)を進むが、次第に樹木が増えちょっとした山地(東西に延びるカンタブリア山脈の東端?)を超えると日本とよく似た風景に変わってくる。

車窓からの眺めは緑が溢れ、道路に沿った樹林越しにキラキラ光る清流も見える。こんなしっとりとした景色がスペインにもあるのかとちょっと驚く。スペイン中央台地の乾燥した赤茶けた荒野やアンダルシアのオリーブ畑の丘陵とは大違いだ。

景色が変わるのは気候が変わったからだろう。横切った山脈の北側は大西洋(ビスケー湾)に面していてやや雨の多い温暖湿潤型の気候になったことが関係している。

予定どおり16時半すぎにはサン・セバスチャンの町に入った。ほどなく到着したバスターミナルは、ちょっとした広場に10台ぐらいの
バスが離発着できる乗り場と簡易な屋根がかかった待合所があるだけだ。町によってバスターミナルがこうも違いがあるのも面白い。
予約していた宿は町の中心部に近いところにあり、南外れのターミナルからはタクシーで行く以外ない。

この宿を取るのには結構難儀した。こちらに来る3ヶ月以上も前にネットで探っていたのだが、元々人気観光地なうえに時期がまだ夏のバカンス終盤に当たるらしく手頃な物件は残っていなかった。

結局多少高めだったが、美食で名高いサン・セバスチャンのバル街に歩いて行ける立地条件を優先し何とかアパートメントホテルを1泊確保した。


タクシーは町を東西に分断するウルメア川(Rio Urumea)に沿って海方向に進みサンタ・カタリーナ橋(Puente de Santa Catalina)を渡って件のアパートメントホテルに着いた。幸いここには管理人が常駐していて鍵の受取りは問題なし、あっさり部屋に落ち着くことができた。

結構年季の入った建物の4階でエレベーターを出て扉を開けるとそこはゆったりした2LDK(65㎡) のマンションだった。やや冷たい感じがしないでもないが、内部や調度品は黒と白のモノトーンでまとめられていて品よく落ち着いた印象だ。勿論キッチンもすっきり完備していたが1泊ではほとんど利用せずで勿体ない。



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パンプローナを出た直後はまだこんな景色が続く。



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しばらく行くと山間に入っていく。カンタブリア山脈東端の急峻な石灰岩の岩山が現れ、それを越えると景色がガラリと変わる。



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日本で見るような景色。道路に沿って緑の中を清流が流れている。そろそろサン・セバスチャンも近い。





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サン・セバスチャンのバスターイナルは野外だった。何とものどか。



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一泊したアパートホテルの入り口。左側に管理人室があってあっさり鍵をゲット!





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マンション内の一つのベッドルーム。落ち着いた部屋の色調と照明が大人の雰囲気。




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ダイニング・キッチンのエリア。調理用備品は完備。


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こちらはリビングエリア。




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泊まった部屋は日本流で言えば4階。出窓から中庭をのぞく。



 [サン・セバスチャンのバル街]

部屋で一休みしてから夕暮れが迫ってきた街に出かけた。
宿を出てすぐのサンタ・カタリーナ橋を渡っている20時半頃が日没の時刻で、ウルメア川の川べりは茜色の夕焼けの残照が美しい。

あらかじめ狙っていた2,3軒のバルを地図で確認しておいたのだが、暗くなってくるとそれらを簡単に見つけられるほど小さな町ではない。この辺にあるはずと思っても見つからなかったり、見つけてもイメージがちょっと違ったりで入る店が定まらずしばらくウロウロした。土地勘のない悲しさ、初めての街だからしょうがないか……

結局探し回るのにも疲れてきて数多ある中で適当な1軒に入った。ごくありふれたバルだったが、すでに地元客らしい連中で賑わっている。ピンチョス(Pinchos:元々魚介類などを楊枝に刺したタパス料理の意)と呼ばれるタパスのメニューがおでん屋の品書きよろしく壁に書かれているが、知らない食材関係の単語が多くイマイチ理解できない。

それでも白ワインと名物のタコのガリシア風(Pulpo a la Gallega)のほか何品かマリスコス(魚介類)を取ってシェアした。結構ボリュームもありすぐにお腹が一杯になった記憶だけが残っている。

ピンチョスといってもバリエーションがあり、ほんの入り口を垣間見ただけで云々言えるはずもないが、”ピンチョス発祥の町”サン・セバスチャンのバルに一歩を印したのは事実である。


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時刻は20時半すぎ、夕闇が迫る直前のサンタ・カタリーナ橋から見るウルメア川(河口方向)が美しい




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暮れなずむウルメア川沿いの街並み。引き潮の時間帯らしかったが水面に映る茜色の建物も印象的。



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橋を渡って右折、振り返って今渡ってきたサンタ・カタリーナ橋を見る。



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入ったバルの内部。長いカウンターの内では二人の女性が仕切っていて、壁にはピンチョスのメニューが見える、






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頼んだピンチョスの一皿。



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宿に戻る途中のウルメア川沿いで、サン・セバスチャン一番の五つ星ホテル、マリア・クリスティーナホテルの前を通った。1912年開業の伝統と格式を感じさせる。



 [モンテ・イゲルド山]

一夜明けてこの日も快晴、夕方に次の町ビルバオに移動するのだがそれまでの数時間、この町のシンボル、コンチャ海岸を中心に歩くことにした。まずは高い所から見下ろそうと、貝が開く根元の両端にあるモンテ・イゲルド山かモンテ・ウルグル山のどちらかに登ってみることにした。

その前にまずは朝食だ。宿近くの大通りにあったバルでクロワッサンとカフェ・コン・レーチェで朝食、一度部屋に戻って荷物をまとめ今日も荷物をデポし宿を出た。

つかまえたタクシーの運転手に尋ねてみるとモンテ・イゲルド(Monte・Igeldo)山の方を薦められた。麓からケーブルカ-(フニクラール)が出ていて簡単に頂上まで行けるし、展望台からの眺望が抜群という。

タクシーがケーブルカー乗場の前に着いたときはまだ建物自体の扉が閉まっていた…が、ほどなく従業員のおじさんたちも集まってきて切符売場の窓口も開き、年代物の赤いケーブルカーは発車オーライになった。毎日始発は10時すぎのようだ。最初の客は我々と頂上で働くおじさんだけ、あっという間に頂上の終点に到着した。

頂上には石造りの古城風の展望台があり小さな店が何店かあるだけだが、コンチャ湾の入り口に浮かぶサンタ・クララ島、対岸のモンテ・ウルグル山、湾の奥に光るコンチャ海岸とその背後に拡がるサン・セバスチャンの町を一望でき、運転手が言っていた言葉に納得した。

天気はこれ以上ない条件だが、眺めるコンチャ海岸や市街の方向は東向きになるのか、まだ昇りきらない陽のせいで逆光になる。折角の絶景が眩しくて100%でないのは残念、この山に来るのは午後がいいのかも知れない。

それでも一通り眺望を楽しみケーブルカーで下りる頃には観光客も増えていた。終点からさらに坂を下るとコンチャ海岸の西端の海岸道路につながっていた。



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今朝もいつものクロワッサンとカフェ・コン・レーチェの朝食。



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この店の朝食メニュー。注文したクロワッサンとカフェ・コン・レーチェだけなら2.5€だから300円もしない。これに卵、ジャガイモ、ベーコンの皿を付けると7€になる。




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カウンターではこれから仕事の地元の人達も朝メシ中。




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モンテ・イゲルド山の登山電車(ケーブルカー)。





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登山電車は緑の木立ちの中を登っていく。




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ケーブルカーを降りて展望台に上り真っ先に観る景色はコンチャ湾。その背後はサン・セバスチャンの町だが逆光で見づらい。



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正面奥の小高い丘はモンテ・ウルグル山、中央に外海を遮る形でサンタ・クララ島が見える。




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コンチャ海岸から右に目をやると緑の中にサン・セバスチャン(San Sebastián)の町が拡がっている。人口は20万弱、バスク語ではドノスティア(Donostia)と呼ばれている。バックの山々がカンタブリア山脈になるのだろう。



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頂上にある古城風石造りの建物だが単なる展望台?




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帰りのケーブルカーでは乗客も増えてきた。




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ケーブルカーを降りて坂を下ってくると「Funicular」(フニクラール:ケーブルカーの意)の案内板があった。



 
[海岸通り]

スペインには風光明媚なビーチリゾートが多いが、そこには必ずと言っていいほど海岸通りがあり、遊歩道が整備されている。
ヨーロッパ人は遊歩道をそぞろ歩きするのがお気に入りらしく、夕方になるとバカンスで長期滞在している家族連れから老夫婦まで、老若男女がのんびり散策する光景をコスタ・デル・ソルの海岸町でよく見かけた。

コンチャ海岸はそんなビーチリゾートの先例の一つだろう。というのは19世紀後半には当時のスペイン王侯貴族や富裕層がサン・セバスチャンで夏を過ごすようになり、この海岸はヨーロッパでもっとも人気のある都市型ビーチの一つになった歴史があるからだ。

遠浅の青い海はサンタ・クララ島が外海を遮っていていつも波静かだし、70mあるという広い砂浜ではビーチバレーやトライアスロンの大きな大会も開かれるという。

砂浜に沿って走る海岸通りの海側に幅広の遊歩道(Paseo de la Concha)があり、美しいコンチャ湾を眺めながらのブラブラ歩きは最高だ。



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コンチャ海岸の西端に出てきた辺り。多分早朝にブルが走って砂浜を清掃した跡(?)が残っている。






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遊歩道に沿ってデッキ状の通路がった。砂浜の幅が広くなっていてビーチバレーの大会が開かれるのはこの辺りか。





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午前11時を回ったばかりの平日だが、徐々に海水浴客が増えてきた。




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歩いてきた遊歩道を振り返る。まだ昼前だがそこそこの人出だ。画像中央の丘がさっきまで居たモンテ・イゲルド山、頂上の展望台も見える。



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絵はがきのような一枚、左の円丘はモンテ・ウルグル山。





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遊歩道の一角に、砂浜に突き出た展望台があった。正面はモンテ・ウルグル山。




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モンテ・イゲルド山が遠くになった。右側はサンタ・クララ島。



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海岸通りを進むに従いモンテ・ウルグル山がだんだん大きく見えてきた。




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右側の海岸道路(車道)と左側の砂浜に挟まれて幅広の散策路が延々と続く。



 [サン・セバスチャンの街並み]

ケーブルカーを降りて1時間は歩いただろうか、コンチャ海岸の東の端に近づいた辺りで遊歩道沿いに「La Perla」(Perlaは真珠の意)という洒落たレストランを見つけた。

正面入り口は遊歩道に面しているが、奥(海側)にはテラス席があってそのまま砂浜に下りられるようになっている。まだ12時前だから昼飯には早いのだが、ビールで時間をつぶしつつ昼食の準備が整い次第頼むことにした。

この後14:10発のバスでビルバオに移動する予定なのでそんなに余裕はない。店に入って30分ほどしたところで幸いにも注文をとってくれた。
ホワイトソースのパスタと海鮮サラダにしたと思うが、店の雰囲気と合う上品な味でお腹にもやさしかった。

店を出て少し東に歩きこの町の中心街路、リベルター通り(Av. de la Libertad)に入った。装飾が施された由緒ありそうな建物が高さを揃えて立ち並び、重厚で洗練された印象を与える通りだ。この道を道なりに行けば宿に近いサンタ・カタリーナ橋につながっているはずだ。

通りの両側はいわば旧市街で左側一帯には憲法広場、県会議事堂、市庁舎、右側にはカテドラルなどがあるのだが、時間が許さず割愛した。

20万に満たない人口の町にしては、街の佇まいが垢抜け過ぎ(?)ている。バスク地方は裕福で生活レベルが
高いと聞いていたがパンプローナといい(この後行くビルバオも)確かにその通りだ。

この町では50年以上も続いている夏場の国際映画祭や音楽週間が有名だが、観光と若干の商業だけでこれだけの都市を維持できる秘密は何なのか?

答えは全ヨーロッパに知れ渡る「美食のまち」に育ててきた地域の独自性にあるらしい。伝統ある観光地としての名声を土台に、”美食”という独自の味を加えた厚みのある観光町おこしが見事に成功しているケースのようだ。



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レストラン「La Perla」の入り口、こちらの人は店先のメニューを見て食べたい料理があるか、値段はどうか吟味した上で入るかを決めるのが普通のようだ。






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まずはビールをもらう。出ているのはパン?





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ホワイトソースパスタ、カルボナーラだったか。味は普通に美味しい。




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海鮮サラダはシェアして……





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遊歩道から見た「La Perla」、海辺沿いのお洒落な海鮮レストランといったところ。





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左のコンチャ海岸と別れて右にカーブしていくとリベルター通りに続く。曲がり角は観光トロッコ車の乗り場らしい。





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リベルター通り(Avenida de La Libertad)の交差点で。





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緑濃いリベルター通り、左に曲がると市庁舎などがある。




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建物の高さがそろい、頂部には凝った搭屋が載っている。建設時の町の繁栄ぶりを感じさせるリベルター通り。



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寄れなかったこの町のカテドラル(Catedral del Buen Pastor)。(Wikipediaから)



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サンタ・カタリーナ橋まで戻ってきた。端のたもとから上流側を見る。水がきれい。




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橋を渡って宿の近くまで来た。この辺りの建物も頂部をみるととても凝った造りだ。




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このALSAのバスでビルバオに向かう。出発は5分後、定時のようだ。



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