9.アンティグア生活つれづれ③(マヤ音楽博物館他) [グアテマラ アンティグア]
[ アンティグアに住んでみて:マヤの音楽博物館 ]
ラ アソテア文化センターのコーヒー博物館については前回触れたが、その隣に「Casa K'OJOM」と呼ばれるマヤの音楽博物館が併設されている。
マヤの無形文化遺産とも言うべきマヤ民族音楽を中心に彼らの祭事・風俗などに関わる展示品を見れるほか、ミニシアターでは伝統的なマヤ族の祭りや生活の様子も映像で観ることができ珍しい体験ができる。
タイミングよく10人ぐらいのグループに加わって見学開始、民族衣装の女性がゆっくりした歯切れの良い西語で説明してくれる。一回り30~40分ぐらいか。
今回訪れたのはスペイン語学校の課外授業としてで西語のヒアリングとマヤ文明の文化理解の一助になるからというもの。しかし、必死に耳を傾けても分からないものは分からず断片的にしか聞き取れない。まだまだ先は遠いことを再認識。
展示されているのは、巻貝から作ったほら貝、セラミック製のオカリナ、木を削って作っただろう縦笛や横笛、カメの甲羅を空洞にした小太鼓、ヤギの皮を張った大太鼓、木箱を手で敲く太鼓、小さいひょうたんの種を残して乾燥させた(?)マラカス、各種のマリンバ、さらには名前の聞き取れない原始的な楽器もあったが、案内してくれた女性がすべての楽器を吹いたり,敲いたりして音色を聴かせてくれた。
・・・が、昔マヤの人々が奏でていたリズム・メロディーがどんなものだったのかは分からない。
スペイン人が入ってくる前の時代の楽譜は勿論、記録もないため実際のところはよく分からないようだ。
いずれにしても、なかなか面白い博物館だった。もしアンティグアに行くことがあれば必見だ。
「マヤ音楽博物館」(Casa K'OJOM)に通じる入口。
左に行くと「Casa K'OJOM」の音楽博物館、右はコーヒー博物館の案内板。
館内を案内してくれたグアテマラ美人のお嬢さん。幾つかの小部屋に分かれたディスプレイは勿論、マヤの民族音楽に使われていた各種の楽器(打楽器が多い)を実際に演奏しながら親切に説明してくれる。
マヤ文明は、グアテマラを中心に、北は今のメキシコ チャパス州、ユカタン半島、南はホンジュラスまで拡がっていた。それはピラミッド遺跡の存在が証明しているといい、22の多種言語が共存するむしろ統一感のない国だったようだ。
ガイドの説明に聞き入る人達。展示室は基本的に暗くしてスポットライト効果を高めているので写真の撮影は辛い。
貝殻(大型の巻貝?)から作った楽器をを吹いてくれた。音色はほら貝そのもの。
左腕でカメの甲羅を下にして抱え、右手に持ったスティックでお腹の部分を敲いて音を出す。
木製の箱(?)を手のひらや指で敲く。
羊の皮を張ったタンボール(太鼓)を叩いてくれた。
携帯しながら敲く縦型のマリンバ。
背中にしょったマリンバ。
いわゆるマリンバ。恐らく植民地時代に入ってからのものだろう。
[ アンティグアに住んでみて:食のこと ]
わずか1ヶ月だったが、グアテマラの田舎町、それも現地の家庭にホームステイさせてもらった。
昔南米の国で生活した経験があったので日常生活であまり困ることはなかったが、こちらが歳をとったせいかちょっとしたことで戸惑うこともあった。
しかし、食に関していえば、下宿した家庭はこの国では中の上レベルと思うが、毎日外国からの語学生を相手に食事を提供しているせいだろう、無国籍な料理(野菜・果物・卵・鶏肉・パンなどが中心)が出ることが多く内容についてはあまり問題はなかった。
時にはトウモロコシの粉から作ったトルティージャやフリホーレス料理(frijores:煮たインゲンマメをつぶしたもの、甘くはない。)、タマル(tamal:とうもろこし粉の皮にトマトソースで煮込んだ鶏肉や野菜をくるみ、バナナの葉で包んで蒸したチマキのようなもの。)なども出してくれて定番の地元料理も楽しめた。
トルティージャは地元ではパン代わりの主食なのに最近は自前では作らなくなっているらしい。というのは、この町では日本のコンビニのようなティエンダ(Tienda:元々店という意味)と呼ばれる小さな雑貨屋がここそこにあるのだが、昼時になると店の一角に蒸かし器が置かれてホカホカのトルティージャが売られているからだ。
直径15cmぐらいのやつが3枚で20円ほどだからトウモロコシ粉から手間をかけて作るよりは店で買った方が楽ということか。
12時に学校が終り下宿に戻る途中で何枚か買って帰り、小腹がすいた時に別途買っておいた唐揚げなどを包んで食べたことを思い出す。
ある日の下宿の朝食。フルーツジュース、フルーツサラダ付きスクランブルエッグにパンとカフェオレという今風の健康的なもの。
真ん中の赤い看板が付いた店は焼き鳥屋でここで唐揚げを買った。戸口上に付いている看板を見ると何屋さんか分かる。画面の右隣は宝石・時計店、焼き鳥屋の左隣りは会計事務所の看板、さらにその左は印刷所のようだ。この町の商店街では防犯上の理由なのか、このような入口の狭い店が普通で閉鎖的な印象を与える。
ある食堂で出てきたホカホカのトルティージャ。
定食屋の入口横でトルティージャを焼いていた。焼き上がったら蒸篭(せいろ)で蒸かして出来上がりだ。
[ アンティグアに住んでみて:アイスクリーム ]
ところでアンティグアで感激したことの一つは旨いアイスクリームに出会えたことだ。
「Café Condesa 」というレストランのアイスクリームは秀逸だった。ほかの店でも旨いのかは定かでないが、とにかくこの店のアイスクリームは原料の牛乳と卵黄の味が絶妙で、甘すぎずくどすぎず何か懐かしい上品な舌触りは今でも時々思い出す。
同宿の滞在歴の長い若者が連れて行ってくれたその店は中央公園に面した本屋を通り抜けその奥にあった。
表通りから20mも入ると小ぶりのパティオがあり、庭の部分とそれを取り囲む回廊部分がカフェになっていて雰囲気もいい。
最初に行ったときはコーヒーと普通盛りのアイスクリームを頼んだのだが、その旨さが忘れられず後日再度出かけ、ドブレ(ダブルの意)を注文し心ゆくまでその味を堪能したものだ。
これも、アンティグアを訪れることがあったら絶対に外せない穴場だ。
最初に食べた時の普通盛りのアイス。とにかくミルクと卵黄が絶妙なバランスでねっとりしているがそれでいてくどくなく昔の懐かしい味にすっかり感激。
前回食べた時の味が忘れられず日を改めて二回目に挑戦、ダブル(ちょっとしたドンブリだ!!)を注文。これでも400円もしない、その安さにまたまた感激。パティオの席で。
[ アンティグアに住んでみて:生活インフラ ]
海外に出ると日本の日常生活があまりに居心地が良く、便利で快適なことに改めて気づかされる。
とにかくあの暖かい便座と柔らかくて上質なティシュペーパーの肌触りが懐かしくなるのは、歳を取ったせいだけではないだろう。
日本の生活の質が今のように高くなったのはそんな昔でもないが、そのせいで日本人が過保護になっているのはやむを得ないことかも知れない。最近の日本の若者が外国に出たがらないのはそのせいだということを聞くにつけ、こちらで生活してみると確かに彼我の差を感じる。
滞在していた部屋の壁には節電の張り紙があったから家主は電気の無駄遣いに相当気を使っていたようだが、この国では今の時代でも偶に停電がある。
恐らく電力供給能力がかつかつで余裕などはないから、ちょっとした故障が起これば即停電ということになるのだろう。
シャワー(普通バスタブはない。)を使っているときに停電があるとポンプが止まって水が出なくなったり、簡易なシャワーでは電熱線で水を温水にしているケースもありお湯が水しか出なくなる時もある。
下宿のメインのシャワーはガス(プロパン)を使っていてタンクにお湯を貯めておく方式だったので、停電でなくても二番手で入るとお湯が途中で切れてしまうこともままあった。
水事情も全く同根で貧弱な上下水道設備を騙しだまし使っているのだろう。恐らく上水道はポンプ能力不足、下水管は管径不足で時折水圧低下や管づまりなどの問題を起こしていたようだ。(とは言えアンティグアの街中は普通に水洗トイレが普及している、念のため)
僅かな経験でモノを言うのも憚るが、グアテマラの1人当たりGDPは 3800ドル(参考ながら日本は 36,000ドル台、IMF統計)程度だから電気・水道・ガスなどの生活基盤は勿論、もっと幅広い社会システムに問題を抱えているのはむしろ当然かも知れない。
日本にいると当たり前のことが、本当は当たり前でないことに気づかされた滞在だった。
( 以上でこの旅記録は終りです。)
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